Last updated:2018/7/4
『まほろばの項』

過去・現在・未来からこぼれ逝く言葉の雫

 11    『剣道部物語 2』
 剣道というスポーツは、「スポーツであってスポーツではない」。つまりは「武道」以外の何物でもないのだ。例えば、多くの(というかほとんどの)スポーツは得点すれば、その喜びを直後に表現される事が許されている。いわゆる「ガッツポーズ」ってやつだ。しかし、剣道にはそれが許されない。試合を終え、コートを出るまで礼節が重んじられる(くわしい事は「光の項」を参照)。柔道は世界的なスポーツになると同時に、武道ではなくなった。柔チャンがオリンピックで相手を投げた直後ガッツポーズを取った時は、複雑な心境だった。もはや武道と呼べるのは剣道とすもうぐらいか・・・。
 と、まあ、そんな「武道」としてのプライドにしがみつく剣道だから、高校の剣道部の封建的な上下関係は想像以上のものであった。
 1年生は、朝早く道場に行って雑巾がけ。そのため僕の起床時間は、中学時代より1時間は早くなった。当然、放課後は先輩より先に道場に入り、準備を整えて待っていなければいけない。そして先輩が入ってくるなり、大きな声で挨拶をしなければならないのだ。問題は、このあいさつ。
「チョウ―ッ!」
これがそのあいさつ・・・。朝でも、昼でも、夜でも・・・とにかく先輩に会ったら
「チョウ―ッ!」
なのだ。この話をすると、多くの人は信じないか、笑い出すかのどちらかなのだが事実そうなのだから仕方がない。何かの時に先輩から、そのいわれを聞いてみたが
「知らない。俺も、先輩に聞いてみたがことがあるがわからないといわれた。」
「・・・・・。」
この時点で、うちの高校は創立80周年をむかえていたのだが・・・。
ちなみに、今現在働いている職場に、10歳年上の同じ高校の剣道部出身の先輩がいる。ためしに聞いてみたら、やっぱり「知らない」と言われた。ここまでくるともはや感動モノである。はたから見て「くだらないこと」も、歴史を積み重ねれば、伝統になるのだ。
 卒業以来、母校なんて行った事がないが、今でもこの伝統は生きているのだろうか?あれから二十年を過ぎているけれど・・・。ならばいっそもう一度聞いてみたいものだ。
「チョウ―ッ!」



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