ちょっと身体がだるいので、ごろごろしながら昔の文庫本をあさっていたら、ストンと落ちてきたのが大学時代に読んだ『青が散る』だった。ということで思わずページをめくり始めてしまった。
無名の新設大学に入学した主人公は、ひょんな事からテニス部に入る事になる。大学で出会う多くの個性的な友人たち。そして魅力的な女の子。朴とつな主人公の不器用なまでの恋愛。
当時、三流大学に通っていた僕が自分と重ねて胸を熱くしながら読んだ物語。
TVドラマ化もされたこの物語には、主人公の友人が歌う歌があった。どのようなメロディだったか今となっては思い出せない。切なげなメロディ人生の空しさを歌い上げる詩に、涙した記憶がある。小説に記されていた詩は、次のようなものだ。
『人間の駱駝(らくだ)』
盛り場の孤独にたたずみ
人間の駱駝が生きていく
夢も恋も嫉妬と化すから
心の瘤に隠して歩いていく
原色の命をひきずり
駱駝はあてどなく地下にかえる
生きていたいだけの人間の駱駝
読んでいて、この三番の歌詞が特に胸に染みて涙があふれた。
「生きていたいだけの人間の駱駝」
と何度も繰り返す。僕も気がついたら、重い瘤を背負って、あてどもなく砂漠をさまよう(しかもたった一人で)人間の駱駝になってしまった・・・。
出来るなら、もう1度この歌を聞きたいものだ。
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