「富島健夫」と言っても、ご存知の方は今や、皆無かもしれない。集英社に「コバルトシリーズ」という少女向けの文庫本シリーズがあり、僕はその中で、小説家である彼とであった。
中学校の修学旅行の買い物に友人たちと出かけた日、「バスの中は退屈だろう」という友人の言葉で何げなくてにした文庫本。それが富島氏の「制服の胸のここには」であった。
高校に入学した主人公が、入学式当日、桜の木の下で美しい少女を目にする。凛とした面持ちに、やさしい眼差しの少女。二人はふとした事で、知り合い、互いに恋心を抱き、それゆえの嫉妬心や猜疑心を乗り越え、結ばれて行く・・・。
いわゆる恋愛小説の王道であるが、その主人公である少年の、まっすぐな意志。そして何よりも、少女のひたむきさに打たれた。
一時は、芥川賞候補にもなった富田氏も晩年は、エ○小説家となった観が強い。しかし、彼の残した青春小説は、僕の「女性観」に大きな影響を与えた。彼の小説の中のような少女に、僕はもう出会えそうもない。
ちなみに、彼の著名作に「幼な妻」というTV化されたものがある。彼の作品のほとんどはもう目にする事はできないが、できれば、読んでみて頂きたい。
カメ的小説評価・・・・・☆☆☆☆☆
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