Last updated:2018/7/4
『まほろばの項』

過去・現在・未来からこぼれ逝く言葉の雫

 1    初  恋
 僕の初恋は小学校二年生の時だった。笑うと両頬にえくぼの出来るかわいい女の子。幼かった僕は彼女への想いを素直に言葉に出来るはずもなく・・・。「えくぼセイジン」なんてあだ名をつけて、からかっていた。よくある愛情表現の裏返しだ。
 『君と話がしたい。君のことを知りたい』
という僕の想いは
「や〜い、えくぼセイジン!」
という言葉に置きかえられてしまう。
周囲の仲間も僕に続く・・・。僕は言葉を止められない。
その時、彼女はどんな思いだったろうか?僕を憎んだろうか?
僕の言葉が彼女の中で真実の想いに翻訳されることは、なかったのだろうか?
 
 1度だけ、彼女の家まで友人3人と連れ立って出かけて行ったことがある。3キロもある彼女の家までの道のりを僕らは歩いた(今思い出すと、心の中に『スタンド・バイ・ミー』が流れてくる)。
彼女の家で何をしたのか覚えていない。
しかし、ときどき今でも夢を見る。
 赤い小さな靴が片方だけ、川を流れて行く。彼女と僕は川沿いにそれを追いかける。その靴を川へ放りこんだのは、僕だったのだろうか?彼女の顔は涙で濡れていただろうか?思い出せない。夢では二人がいつまでも川原を走り、赤い靴を追いかけているのだ。
あれから二十年たった今でも、かわることなく・・・・・。
 
 
 
 



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